諸葛亮評(六)

 諸葛亮は『将材』と『将器』の二著わしており、将となる道を非常に明快に説いていると同時に、将才の大小の違いも明らかに示しており、その軍事的才能が他を圧倒するものであることが窺えます。

まず『将材』篇を見てみましょう。
「夫将材有九」とは、将の才能には九種類あるという意味です。以下にその各々を説明します。

【仁将】
「道之以德,齐之以礼,而知其饥寒,察其劳苦,此之谓仁将。」
徳によって導き、礼によって整え、飢えや寒さを理解し、労苦を察する、これを仁将といいます。

【義将】
「事无苟免,不为利挠,有死之荣,无生之辱,此之谓义将。」
事柄においておざなりなことなく、利に惑わされることなく、死すべき栄誉があり、生きる恥を負わない、これを義将といいます。

【礼将】
「贵而不骄,胜而不恃,贤而能下,刚而能忍,此之谓礼将。」
尊い身でありながら驕らず、勝利してもそれに頼ることなく、賢明でありながら謙虚に振る舞い、また剛毅でありながら耐えることができる、これを礼将といいます。

【智将】
「奇变莫测,动应多端,转祸为福,临危制胜,此之谓智将。」
奇妙な変化は測り知れず、動きは多岐にわたり、災いを福に転じ、危機に際して勝利を収める、これを智将といいます。

【信将】
「进有厚赏,退有严刑,赏不逾时,刑不择贵,此之谓信将。」
進むときは厚い賞を与え、退くときは厳しい刑罰を科し、賞は時を逸せず、刑罰は身分を問わない、これを信将といいます。

【步将】
「足轻戎马,气盖千夫,善固疆埸,长於剑戟,此之谓步将。」
足が軽く戦馬を操り、その気概は千の兵を凌ぎ、国境を固く守るのが得意で、剣や戟に長ける、これを步将といいます。

【骑将】
「登高履险,驰射如飞,进则先行,退则後殿,此之谓骑将。」
高所に登り、危険を顧みずに歩み、駆けて射る様はまるで飛ぶがごとく、進むときは先陣を切り、退くときは後方に控える、これを騎将といいます。

【猛将】
「气凌三军,志轻强虏,怯於小战,勇於大敌,此之谓猛将。」
その気概は三軍を凌ぎ、強大な敵を恐れず、小規模な戦いには慎重であっても大敵に対しては勇敢に立ち向かう、これを猛将といいます。

【大将】
「见贤若不及,从谏如流,宽而能强,勇而多计,此之谓大将。」
賢者に会えば、自らの及ばなさを痛感し、忠告には流水のごとくすぐに従い、寛容でありながら必要な時には強さを示し、勇敢にして計略に富む。これこそ大将と謂うべきである。

 前述の観点からいうと、諸葛亮はまさに大将であります。大将とは、仁将、義将、礼将、智将、信将のすべての徳を兼ね備え、さらに步将、骑将、猛将を自在に操ることができる者でございます。三国時代において大将の称号にふさわしい人物は、東呉の周瑜や陸遜、曹魏の曹操、そして司馬懿のみであったと言えます。しかしながら、これらの人物と諸葛亮を比較した場合、明らかに一定の差が存在しています。とりわけ、司馬懿について考えれば、彼は強大な魏の雄師を率いたにもかかわらず、諸葛亮に自由自在のように操られ、制することができなかったため、その差は言葉だけでは測り知れません。他の将たちにおいても、誰が断言して司馬懿を上回ると主張できるでしょうか?

 
 

2025年02月26日