競争法は、何を守る法律?
競争法が目指しているのは、特定の企業を勝たせることでも、競争に負けた企業を必ず助けることでもありません。企業が工夫を競い、消費者が商品やサービスを選べる競争の仕組みを守ります。
競争が働けば、企業はよりよい商品を作り、価格を工夫し、新しい技術やサービスを生み出そうとします。逆に、企業どうしが競争をやめたり、有力な企業が競争者を不当に排除したりすれば、選択肢が減ることがあります。
日本では、独占禁止法が競争法の中心となる法律です。大企業だけを規制する法律でも、独占を禁止するだけの法律でもありません。ここでは、代表的な問題を三つの場面に分けて見ていきます。
競争者どうしが競争をやめてしまう
本来、競争する企業は、それぞれが価格や取引条件を決めます。ところが、同業者どうしが価格、数量、取引先などを相談して決めると、消費者や取引先が競争による利益を得られなくなる場合があります。
たとえば、同業者が「来月からそろって値上げしよう」と合意するのが、価格カルテルの例です。また、入札参加者が事前に落札者や入札価格を決めるのが、入札談合の例です。競い合うはずの企業が、相談して競争をやめてしまいます。
独占禁止法は、こうした合意によって競争を実質的に制限する行為を「不当な取引制限」として禁止しています。
競争者を不当に排除する
市場で有力な企業が、その力を利用して、新しく参入しようとする企業や既存の競争者の活動を不当に妨げる場合があります。たとえば、取引先に圧力をかけ、競争者との取引をやめさせるような場面です。
よい商品やサービスを提供して競争に勝つこと自体は問題ではありません。強い企業であることや、市場でのシェアが大きいことだけで違法になるわけでもありません。問題となるのは、競争の方法と競争への影響です。
独占禁止法では、行為の内容や影響に応じて、他社を排除して競争を実質的に制限する「私的独占」や、公正な競争を妨げるおそれのある「不公正な取引方法」などに当たるかを検討します。
取引上の立場を不当に利用する
取引先を失うと事業に大きな支障が出るなどの理由で、一方が相手の要求を断りにくいことがあります。ここで見るのは、企業の規模だけでなく、その取引関係でどちらが強い立場にあるかです。
その立場を利用して、一方的に不利益な条件を押しつけたり、本来負担する必要のない費用を求めたりすることがあります。たとえば、納入業者に対して、不当に代金を減らすことや、金銭の負担を強いることです。
独占禁止法は、取引上の強い立場を利用し、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為を「優越的地位の濫用」として禁止しています。単に弱い会社を助けるというだけでなく、取引相手が自主的に判断できる余地と、取引の公正さを守る視点が重要です。
競争なら何をしても自由?
競争は、企業の努力を促し、よりよい商品やサービスを生み出す原動力です。しかし、競争だから何をしてもよいというわけではありません。
競争者の不当な排除や取引相手への不利益の押しつけに加え、うそや誤解を招く説明で顧客を誘うなど、競争の方法そのものが問題になることもあります。
「競争があるかどうか」だけでなく、「どのような方法で競争しているのか」「その行為が競争にどのような影響を与えるのか」を確かめます。誰と誰が競い、取引先や消費者にどのような選択肢が残るのかも、判断の手がかりになります。
知財権があれば、競争法は関係ない?
そうとは限りません。特許権や著作権などを正当に行使することは、知財制度によって認められています。知的財産制度は研究開発や創作を促し、ライセンスを通じた技術の利用を広げることで、イノベーションや競争を支える面もあります。
一方、知財権に関係する行為でも、その方法や競争への影響によっては、独占禁止法上の問題が生じます。外形上は権利の行使に見えても、目的や方法、競争への影響から知財制度の趣旨を逸脱すると認められる行為には、独占禁止法が適用されます。
たとえば、特許などの利用を認めるライセンスの条件、技術の利用をめぐる制限、複数企業による技術や権利の共同利用です。競争する技術の研究開発を不当に制限するライセンス条件などは、知財法と競争法の双方から検討する必要があります。共同利用についても、技術を使いやすくする効果と競争への影響を具体的に見ます。
「知的財産を保護すること」と「その権利を市場でどのように利用するか」は、必ずしも同じ問題ではありません。権利の保護と利用の仕組みを確かめながら、公正な競争が保たれるかを考える。ここに、競争法と知財法が直接関係する重要な領域があります。